VIXは何を測るのか

VIX(Cboe Volatility Index)は、この先30日間にS&P 500指数がどれだけ大きく動くとオプション市場が予想しているかを年率%で表した指数です。市場が不安なときに大きく上がるため、よく「恐怖指数」と呼ばれます。すでに過ぎた価格の揺れ(ヒストリカル・ボラティリティ)ではなく、今取引されているオプション価格に込められた期待(インプライド・ボラティリティ)だという点が核心です。

VIXがつくられる順序

  1. オプションの気配S&P 500のプット・コール
  2. 二つの満期を選ぶ残り23〜37日のオプション
  3. 分散を計算権利行使価格ごとの価格を合算
  4. 30日に合わせる二つの満期の間を補間
  5. VIX年率%で表示
VIXは誰かが決める数字ではなく、取引されているオプション価格から計算され、ザラバの間ずっと変わります。

数字の読み方:1か月・1日の予想変動幅

VIX 20は「この先1年続くと仮定すれば年20%ほどのボラティリティ」という意味です。この数字を1か月や1日単位に直すと実感しやすくなります。ボラティリティは期間の平方根に比例するため、次のように割ります。

VIXの水準別の予想変動幅(1標準偏差基準)

棒の長さは1か月の予想変動幅です。実際の株価は正規分布より極端な日がよく現れるため、この範囲を超える動きは計算より頻繁です。

VIXはS&P 500指数全体に対する期待です。個別銘柄は指数よりはるかに大きく動くのがふつうなので、VIXが低くても自分の持っている銘柄は1日5%ずつ動くことがあります。個別銘柄の期待ボラティリティは、その銘柄のオプションのインプライド・ボラティリティで別に見ます。

ふだんの水準と急騰の歴史

1990年以降のVIXの長期平均はおおよそ20前後です。市場が穏やかな年には10台前半〜半ばに長くとどまり(2017年には10を下回った日が何度もありました)、大きな危機では短い時間で何倍にも跳ね上がります。

時期何があったかVIX
2008年秋リーマン・ブラザーズの破綻と金融危機2008年11月に終値で80を超えた
2018年2月長い低ボラティリティの後の急落1日で10台後半から30台後半へ2倍以上に跳ねた
2020年3月新型コロナの拡大と急落、米国のサーキットブレーカーが何度も発動3月中旬に終値で80を超え、史上最高の終値

VIXが動く典型的な形(例、実際の値ではない)

点線は長期平均の近く(20)です。急落が来ると数日のうちに跳ね上がり、危機が過ぎると数週間から数か月かけてゆっくり平均のほうへ戻ることが多いです。これを平均回帰といいます。

期間構造とVIX先物

VIX指数そのものは売買できません。その代わり、将来のある月のVIXの値を取引するVIX先物(2004年上場)とオプション(2006年上場)があり、この先物価格を満期の順につなぐと期間構造になります。

VIX先物の期間構造:ふだんと危機のとき(例)

ふだんは先の月ほど高く(コンタンゴ)、危機には近い月が最も高く逆さまになります(バックワーデーション)。近い月が先の月より高くなると、市場が今この時を特に不安視しているという意味です。

VKOSPIと他のボラティリティ指数

同じ方式のボラティリティ指数が市場ごとにあります。自分が投資する市場の指数を一緒に見るほうが正確です。

指数対象市場発表
VIX米国S&P 500オプションCboe
VXN米国ナスダック100オプションCboe
VKOSPI(KOSPI200ボラティリティ指数)KOSPI200オプション韓国取引所

VKOSPIはKOSPI200オプションの価格でこの先30日の期待ボラティリティを計算する「韓国版VIX」です。世界の市場が一緒に揺れる危機ではVIXと一緒に上がりますが、韓国の政策・地政学の問題のように韓国市場だけに当てはまる出来事では、VKOSPIだけが別に跳ねることもあります。ハイテク株の比重が大きいナスダック100のVXNは、ふつうVIXより数ポイント高く動きます。

恐怖・強欲指数

「恐怖指数」という言葉は、米国の放送局CNNが公開している恐怖・強欲指数(Fear & Greed Index)を指すこともあります。名前は似ていますが、VIXとはまったく違う指標です。0から100の間の値で、0に近いほど「極度の恐怖」、100に近いほど「極度の強欲」を意味します。

この指数は、市場心理を示す七つの指標を同じ比重でまとめてつくります。

  1. 株価のモメンタム:S&P 500が直近125日移動平均よりどれだけ上・下にあるか
  2. 株価の強さ:ニューヨーク証券取引所で52週高値の銘柄数と安値の銘柄数の差
  3. 市場の幅:上がる銘柄と下がる銘柄の出来高の差(マクレラン出来高サメーション指数)
  4. プット・コール・レシオ:下落に備えるプットオプションの取引がコールオプションよりどれだけ多いか
  5. ジャンク債の需要:信用度の低い社債と優良社債の利回りの差
  6. 市場のボラティリティ:VIXが50日移動平均より高いか低いか
  7. 安全資産の需要:直近20取引日の株式と国債のリターンの差

VIXと恐怖・強欲指数の比較

VIX恐怖・強欲指数
測るもの30日の予想ボラティリティ(オプション)心理指標7種類
単位年率%、高いほど不安0〜100、低いほど恐怖
発表Cboe(ザラバの間ずっと)CNN
取引商品先物・オプションありなし(参考用)

恐怖・強欲指数は複数の指標の合計なので、一つの指標が跳ねてもあまり揺れませんが、そのぶん反応が遅く、計算に使う期間(125日、50日など)によって値が変わります。VIXの動きも七つのうちの一つとして入っているため、二つの指標が同じ方向に動くことが多いです。

投資に使うときの落とし穴

「恐怖が大きいときこそチャンス」という昔からの言葉がありますが、VIXは底を知らせるサインではありません。2008年にはVIXが40を超えた後も、米国の株価は2009年3月までさらに数か月下がりました。逆に低いVIXが安全を意味するわけでもありません。2018年2月のように、長く穏やかだった市場が1日で変わることもあります。

この章は2026年10月時点の内容です。取引制度・税率・手数料は変わることがあるため、実際の取引や申告の前には取引所・税務当局・証券会社の案内を直接確認してください。「要確認」と記した部分は特に変わる可能性があります。この文章は学習資料であり、特定の銘柄や売買を勧めるものではありません。

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