三つの財務諸表とそのつながり

財務諸表は会社を三つの方向から撮った写真です。

三つは互いにつながっています。損益計算書の純利益は(配当を除いて)貸借対照表の利益剰余金を増やし、キャッシュフロー計算書は純利益から出発して実際の現金の変化に直して計算し、貸借対照表の現金で終わります。一つの表だけを見るとだまされやすく、三つの表がかみ合っているかを見たときに会社が見えてきます。

三つの財務諸表はこうつながる

  1. 損益計算書期間中に稼いだお金 → 純利益
  2. 貸借対照表純利益の分だけ利益剰余金(純資産)が増加
  3. キャッシュフロー計算書純利益から出発し実際の現金の変化を計算
  4. 貸借対照表の現金期末の現金と一致

損益計算書:売上から純利益まで

項目計算読み方
売上高販売金額規模と成長。値上げか販売量の増加かを区別
売上総利益売上 − 売上原価売上総利益率 = 製品そのものの収益性、価格決定力
営業利益売上総利益 − 販売費及び一般管理費本業の利益。営業利益率が業種内の競争力を示す
税引前利益営業利益 ± 金融損益・その他損益・持分法損益利息費用、為替、資産売却益などが混ざる
当期純利益税引前利益 − 法人税株主に帰属する最終利益(連結なら親会社株主・非支配株主に分かれる)

EBITDA(利息・税金・減価償却前利益)は営業利益に減価償却費を足した値で、設備の多い会社同士の現金創出力を比べるときに使います。しかし設備はいずれ買い直す必要があるので、EBITDAだけを見て「現金をよく稼ぐ」と判断してはいけません。

売上1,000から純利益100まで(例)

青い棒は残った利益、赤い棒は出ていった費用です。営業利益率15%、純利益率10%の会社です。

貸借対照表:何を持ち、何を借りているか

資産 = 負債 + 純資産

借金が手に負えるかはインタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益 ÷ 支払利息)で見ます。1より小さければ営業で稼いだお金で利息も払えない状態で、こうした状態が数年続く会社をよく「ゾンビ企業(限界企業)」と呼びます。

キャッシュフロー計算書:利益と現金は違う

区分内容健全な姿(一般的)
営業キャッシュフロー本業で実際に入ってきた現金プラスで、純利益と同じくらいかそれより大きい
投資キャッシュフロー設備投資、他社株式・金融商品の売買成長中ならマイナス(投資)
財務キャッシュフロー借入・返済、増資、配当、自社株買い借金を返して配当すればマイナス

フリーキャッシュフロー(FCF) = 営業キャッシュフロー − 設備投資(CAPEX)です。会社が事業を維持したうえで残した、株主と債権者に返せる現金です。配当と自社株買いの持続可能性は、純利益よりFCFで判断するほうが正確です。

運転資本(売掛金 + 在庫 − 買掛金)は事業を回すのに縛られているお金です。売上が速く伸びる会社は運転資本も一緒に増え、現金が不足しやすくなります。「黒字倒産」という言葉はここから来ています。

利益は出ているのに現金が減る会社(例)

純利益は3年間ずっと100億ウォンなのに、営業キャッシュフローはますますマイナスです。利益がツケと在庫としてだけ積み上がっているサインです。

連結と単体、親会社株主に帰属する純利益

会社が子会社を支配していると、子会社の売上・資産・負債をすべて合わせた連結財務諸表を作ります。会社単独の数字は単体(個別)財務諸表です。持株会社や子会社の多いグループは二つの数字が大きく違うので、比べるときは同じ基準かを必ず確認しましょう。

子会社の株を100%持っていなければ、連結純利益のうち他の株主の取り分は非支配株主に帰属する純利益、自社の株主の取り分は親会社株主に帰属する純利益です。PER・EPS・ROEを計算するときは親会社株主に帰属する純利益を使うのが正確です。連結純利益をそのまま使うと、利益を膨らませて見ることになります。

一時的な損益と「調整後利益」

工場・不動産の売却益、訴訟の賠償、資産の減損、リストラ費用、為替の評価損益といった項目は毎年繰り返されません。こうした一時的な項目が混ざった純利益でPERを計算すると、会社が実際より安く、または高く見えます。

会社は一時的な項目を除いた「調整後利益」を別に発表することもあります。米国ではこれをNon-GAAP利益と呼び、非常によく使われます(11章)。何を除いて計算したのか、毎年「一時的」と言って同じ費用を除いていないかを確認しましょう。

財務諸表の危険信号チェックリスト

  1. 純利益は安定しているのに、営業キャッシュフローがずっと少ないかマイナスではないか?
  2. 売掛金・在庫が売上よりはるかに速く増えていないか?
  3. インタレスト・カバレッジ・レシオが1未満の年が続いていないか?短期借入金の比重が大きくないか?
  4. のれん・無形資産が純資産に比べて大きすぎないか?
  5. 関連当事者(筆頭株主に関係する会社)との取引・貸付金が大きくないか?
  6. 監査人がよく変わる、または会計方針がよく変わらないか?
  7. 「調整後利益」と実際の利益の差が毎年広がっていないか?

業種ごとに見方が違う数字

同じ財務諸表でも、業種によって核心となる数字が違います。一般的な製造業の物差しをそのまま使うと、とんでもない結論が出ます。

業種先に見る数字理由
銀行純金利マージン(NIM)、貸倒費用、自己資本比率貸したお金と預かったお金の金利差が売上で、回収できないお金(貸倒れ)が費用の核心
保険損害率、新契約価値、資本の健全性保険金の支払い比率と長期契約の価値が利益を左右
製薬・バイオ(赤字段階)現金保有額、四半期の現金消費額、パイプラインの日程利益がないので「何四半期もちこたえられるか」が核心
ソフトウェア・プラットフォーム売上総利益率、継続課金売上の成長、顧客維持率追加販売の原価が低く、規模が大きくなると利益率が大きく上がる
製造・装置産業稼働率、設備投資、在庫日数固定費が大きく、稼働率が利益を大きく揺らす(営業レバレッジ)
小売既存店売上の成長、在庫回転、買掛金回転低いマージンを速い回転で補う事業

赤字企業がもちこたえられる期間(現金600億、四半期ごとに75億を使用)

今のペースなら約8四半期(2年)後に現金が底をつきます。その前に資金を調達する可能性が高いです。

短い事例:三つの数字で会社を読む

二つの会社の同じ年の数字です(架空の例)。

項目会社A会社B
売上成長率+30%+8%
営業利益率5%(前年9%)18%(前年17%)
営業キャッシュフロー ÷ 純利益0.41.2

数字一つで結論を出さず、このように「次に確認する質問」をつくるのが、財務諸表を読むことの実際の姿です。

この章は2026年10月時点の内容です。取引制度・税率・手数料は変わることがあるため、実際の取引や申告の前には取引所・税務当局・証券会社の案内を直接確認してください。「要確認」と記した部分は特に変わる可能性があります。この文章は学習資料であり、特定の銘柄や売買を勧めるものではありません。

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