退職一時金と企業年金

退職所得控除と2分の1課税

勤続30年で2,000万円を受け取ると、課税退職所得250万円に対して所得税は約15.6万円(復興特別所得税込み)、住民税は25万円程度です。退職所得はほかの所得と合算せずに計算します(分離課税)。

「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、会社が正しい税額を源泉徴収するため確定申告は不要です。提出しないと20.42%が一律で源泉徴収され、確定申告で精算することになります。

役員等で勤続5年以下の場合は2分の1課税がなく、一般の従業員も勤続5年以下なら控除後300万円を超える部分には2分の1課税が適用されません。

退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 退職所得控除額 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円) 勤続20年超 :800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数退職所得控除額退職金2,000万円の場合の課税退職所得
10年400万円800万円
20年800万円600万円
30年1,500万円250万円
38年2,060万円0円

勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。

iDeCo — 掛金の上限と2027年の変更

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出して運用し、60歳以降に受け取る制度です。掛金は全額が所得控除、運用益は非課税で、受け取るときは退職所得控除や公的年金等控除を使えます。原則として60歳までは引き出せません。

加入者現在の月額上限(2024年12月〜)2027年1月拠出分から(2026年12月分〜)
自営業者など(第1号)6.8万円(国民年金基金などと合算)7.5万円(合算)
会社員・企業年金なし2.3万円6.2万円
会社員・公務員・企業年金あり2.0万円(企業年金の掛金と合計5.5万円以内)企業年金の掛金と合計6.2万円以内
専業主婦(夫)など(第3号)2.3万円2.3万円(変更なし)

厚生労働省の資料に基づきます。加入できる年齢も2026年12月から70歳未満に広がります(老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていないことなどの条件があります)。

受け取り順のルール変更 — 5年から10年へ

iDeCoや企業型DCを一時金で受け取ったあとに会社の退職金を受け取ると、両方の勤続(加入)期間が重なる部分は退職所得控除が1回分しか使えません。これまでは、iDeCoの一時金を受け取ってから5年以上あけて退職金を受け取れば、重複は問われませんでした(いわゆる5年ルール)。

令和7年度税制改正により、2026年1月1日以後にiDeCo・DCの一時金を受け取り、その後に退職金を受け取る場合は、この期間が10年に延びました(2025年までに受け取った一時金は従来の5年ルール)。たとえば60歳でiDeCoの一時金、65歳で退職金を受け取る計画では、控除が重複して税負担が増える可能性があります。退職金を先に受け取り、あとからiDeCoを一時金で受け取る場合の期間(いわゆる20年ルール)は変わりません。

対策としては、iDeCoを年金形式で分けて受け取る、一時金と年金を組み合わせるといった方法があります。どれが有利かは退職金の額、ほかの年金収入、社会保険料まであわせて計算する必要があるため、受け取る直前にもう一度確認しましょう。

公的年金 — 国民年金+厚生年金

受給開始は65歳が基準 — 繰上げと繰下げ

繰り下げると毎月の受取額は増えますが、受け取る期間は短くなります。単純計算では、70歳開始なら約82歳、75歳開始なら約87歳より長生きして初めて、65歳開始の累計額を上回ります(税金・社会保険料を除く)。年金額が増えると税金や健康保険料・介護保険料も増えることがある点もあわせて考えましょう。

支給停止額(月額)=(総報酬月額相当額 + 基本月額 − 65万円)÷ 2

受給開始年齢年金額(65歳=100%)
60歳76%(繰上げの上限)
62歳85.6%
65歳100%
68歳125.2%
70歳142%
75歳184%(繰下げの上限)

繰上げは1か月あたり0.4%減額(昭和37年4月2日以後生まれ)、繰下げは1か月あたり0.7%増額で、減額・増額は一生続きます。

NISAとの関係

老後資金を自分で準備するもう一つの非課税制度がNISAです。2024年から年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯1,800万円まで運用益が非課税です。iDeCoと違っていつでも引き出せますが、掛金の所得控除はありません。令和8年度税制改正には、2027年から0〜17歳もつみたて投資ができるようにする内容が盛り込まれています(実施の詳細は金融庁の発表で要確認)。

どちらの制度も元本保証のない商品を選ぶことができ、どの商品が合うかは運用期間やリスク許容度によって異なります。この記事は制度の説明にとどめ、特定の商品や配分をすすめるものではありません。

よくある質問

退職金は一時金と年金のどちらで受け取るのがよいですか?

一時金は退職所得控除と2分の1課税で税負担が軽いことが多く、年金は受け取る間も運用が続く一方、毎年雑所得として課税され、国民健康保険料などにも反映されます。制度の利率やほかの収入によって結果が変わるため、会社が用意するシミュレーションで比べてみましょう。

外国人が日本を離れると年金はどうなりますか?

加入期間が10年未満なら、出国後2年以内に脱退一時金を請求できます。ただし受け取るとその期間は加入期間から除かれます。日韓社会保障協定には加入期間の通算規定がないため、将来日本の年金を受け取るか脱退一時金を受け取るかを比べる必要があります。

iDeCoはいつから受け取れますか?

60歳から75歳の間で受け取りを始められます。60歳時点で加入期間が10年未満の場合は、受け取りを始められる年齢が遅くなります(最長65歳)。

60歳以降も働くと年金は減りますか?

国民年金(基礎年金)は減りません。老齢厚生年金は、給与と年金の合計が令和8年度の基準で65万円を超えた場合にだけ一部が停止されます。65歳以上70歳未満の人は、働いている間に納めた厚生年金保険料が毎年10月分から年金額に反映されます(在職定時改定)。

計算の基準と出典

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