所得税の計算の流れ
復興特別所得税は所得税額の2.1%で、2037年まで課されます。令和8年度税制改正により、2027年分からは防衛特別所得税1%が新設され、復興特別所得税は1.1%に引き下げ(課税期間は2047年まで延長)となるため、合計の2.1%は変わりません。
支払った社会保険料は全額が社会保険料控除の対象です。同じ年収でも社会保険料が多いほど課税所得は小さくなります。
給与収入 − 給与所得控除 = 給与所得 給与所得 − 所得控除(社会保険料控除・基礎控除・扶養控除など)= 課税所得(1,000円未満切り捨て) 課税所得 × 税率 − 控除額 = 所得税 所得税 × 102.1% = 所得税+復興特別所得税(納める額)
令和8年分の給与所得控除と基礎控除
2025年と2026年の2年続けて控除が大きく増えました。以下は令和8年分(2026年1〜12月の所得)の基準です。
- 基礎控除(所得税): 合計所得金額489万円以下は104万円、489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円。本則が58万円から62万円に引き上げられ、令和8年分・9年分は中低所得者に特例が上乗せされます。2,350万円を超えると段階的に減り、2,500万円超はゼロです。
- 178万円の壁: 給与所得控除の最低74万円+基礎控除104万円=178万円。給与収入だけの人は年収178万円まで所得税がかかりません(2024年分までは103万円、2025年分は160万円)。
- 住民税は別: 住民税の基礎控除は43万円で、給与所得控除の最低74万円は令和9年度分(2026年の所得)の住民税から反映されます。そのため、所得税がゼロでも住民税はかかることがあります。
| 給与収入 | 給与所得控除(令和8年分) |
|---|---|
| 約220万円以下 | 74万円(最低保障額) |
| 約220万円超〜360万円以下 | 収入 × 30% + 8万円 |
| 360万円超〜660万円以下 | 収入 × 20% + 44万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 収入 × 10% + 110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
最低保障額74万円は、本則69万円に令和8年分・9年分限りの特例5万円を加えた額です(令和7年分は65万円)。最初の区分の境目は計算上の目安なので、国税庁の早見表で確認してください。
所得税の税率表と計算例
同じ人の住民税(令和9年度分)は基礎控除43万円で計算し、課税所得241万円 × 10% − 調整控除2,500円 + 均等割5,000円 = 約24万4千円です。このように会社員は所得税より住民税のほうが多いことがよくあります。
例)令和8年分、年収500万円、独身、社会保険料 約72万円(仮定) 給与所得 500万 −(500万 × 20% + 44万)= 356万円 課税所得 356万 − 72万 − 基礎控除104万 = 180万円 所得税 180万 × 5% = 9万円 → 復興特別所得税込みで91,890円
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
源泉徴収と年末調整
- 源泉徴収: 会社が毎月の給与から源泉徴収税額表に沿って所得税を差し引きます。扶養親族は年初に提出する「扶養控除等申告書」で反映されます。
- 年末調整: 12月(またはその年最後の給与)に1年分の税額を計算し直し、取りすぎた分は還付、不足分は追加で徴収します。生命保険料・地震保険料控除、配偶者控除、iDeCoの掛金、2年目以降の住宅ローン控除もここで処理します。
- 令和8年改正分の精算: 2026年1〜11月の源泉徴収は改正前の水準の税額表で計算されており、控除拡大の効果は令和8年分の年末調整でまとめて反映されるしくみです(国税庁の案内による。会社ごとの処理時期は要確認)。
- 源泉徴収票: 年末調整の結果が記載された書類で、翌年1月末までに受け取ります。年収・控除額・税額が載っていて、ローン審査や確定申告、在留資格の更新などに使います。退職したときは退職後1か月以内に受け取ります。
確定申告が必要なケース
会社員は年末調整で完了するのが原則ですが、次に当てはまる場合は翌年2月16日〜3月15日に確定申告をします。還付を受けるだけの申告(還付申告)は、翌年1月から5年間行えます。
申告書は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成し、e-Taxで提出できます。マイナンバーカードがあれば、マイナポータル連携で源泉徴収票・医療費通知・ふるさと納税の寄附データなどの一部を自動で取り込めます。
- 給与収入が2,000万円超: 年末調整の対象外なので、必ず申告します。
- 副業など給与以外の所得が20万円超: 副業の収入から経費を引いた所得が年20万円を超えると申告義務があります。20万円以下でも住民税の申告は別途必要です。
- 医療費控除: 家族合計の医療費(保険金などで補てんされた分を除く)が年10万円(所得200万円未満なら所得の5%)を超えると、超えた部分を最高200万円まで控除できます。セルフメディケーション税制とはどちらか一方の選択です。
- 住宅ローン控除の1年目: 1年目は確定申告が必要で、2年目からは年末調整で手続きできます。
- ふるさと納税: 寄附先が5自治体以内で確定申告の必要がなければ、ワンストップ特例(翌年1月10日までに申請書を提出)で申告なしに住民税から控除されます。6自治体以上の場合や医療費控除などで申告する場合は、特例を申請した分も無効になるため、すべての寄附を申告書に記載します。
- 年の途中で退職し再就職していない: 年末調整を受けていないため、申告すると源泉徴収された税金の一部が戻ることが多くあります。
住民税は前年の所得で1年遅れ
- しくみ: 住民税は1月1日に住んでいる市区町村が前年の所得に対して課税します。所得割は課税所得の10%(道府県民税4%+市町村民税6%)、均等割は年4,000円(道府県民税1,000円+市町村民税3,000円。自治体により加算あり)で、国税の森林環境税1,000円があわせて徴収されるため、定額部分は合計で年5,000円程度です。
- 特別徴収: 会社員は6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きされます。そのため昇給しても住民税が上がるのは翌年6月からです。
- 普通徴収: 自営業者や退職者は納税通知書で、通常6月・8月・10月・翌年1月の4回に分けて納めます。
- 新社会人: 1年目は前年の所得がないため住民税はかからず、2年目の6月から天引きが始まります。「2年目に手取りが減った」と感じる理由です。
- 退職するとき: 1〜5月に退職すると、残りの住民税は最後の給与から一括徴収するのが原則です。6〜12月の退職なら、一括徴収か普通徴収への切り替えを選びます。
日本を離れるとき
出国して非居住者になる場合は、税金の手続きを事前に済ませておく必要があります。
- 所得税: 会社が出国前に年末調整を行います。副業所得などで確定申告が必要なら出国前に申告するか、納税管理人を定めて税務署に届け出て、代わりに申告・納付してもらいます。
- 住民税: その年の1月1日に日本に住んでいれば、その年度の住民税(前年所得分)は出国しても納める必要があります。出国前に一括で納めるか、市区町村に納税管理人を届け出ます。
- 出国後に受け取るお金: 出国後に日本から受け取る給与・退職金などは非居住者として課税(原則20.42%の源泉徴収)される場合があります。移住先の国の税金や租税条約もあわせて確認しましょう。
よくある質問
年末調整を受けていても確定申告してよいですか?
はい。医療費控除や寄附金控除など年末調整で扱えない控除を追加するときは確定申告をします。源泉徴収票の内容をそのまま転記し、追加の控除を入力すれば大丈夫です。
副業の所得が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
所得税の確定申告義務はありませんが、住民税は金額にかかわらず市区町村への申告が必要です。また、医療費控除などで確定申告をするなら副業の所得もあわせて記載します。
ふるさと納税はいくらまで控除されますか?
自己負担2,000円を除いた全額が控除される上限は、所得や家族構成によって異なります。総務省のふるさと納税ポータルサイトの目安表などで上限を確認し、上限を超えた分は通常の寄附と同じ扱いになる点に注意しましょう。
年収が178万円を超えると損ですか?
所得税は超えた部分にだけ税率がかかるため、手取りが逆転して減ることはありません。ただし住民税の基準や社会保険の加入要件(週20時間など)、配偶者関連の控除は別に動くので、世帯全体で考える必要があります。